年末年始休業のお知らせ

2023年12月27日(水)~2024年1月8日(月)まで休業させていただきます。

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歴史学の課題と作法

「人と地域が見える日本近現代史研究」追求の経験を語る

小田康徳著

2024年1月10日発刊

「史料は心、史実は宝、歴史の学びは心意気」という著者の思い、それは、歴史の真実を諦めることなく求めようとする研究者の心が史料を見出し、歴史理解上決定的な史実を確定することができるという著者の信念に由来する。これは公害問題史や地域史研究、また陸軍墓地の歴史研究で知られる著者小田康徳氏の半世紀にわたる真剣な調査研究活動から得られた至言である。本書には、歴史研究者として生きるための必須条件や留意すべき課題が実例と共に記述されている。 著者が長年取り組んできた公害問題の歴史に関しては、「公益(・・)を害すること」を約めた用語が「公害」であり、国やそれに従属する権力がその公益(・・)をどのように考えるかが歴史の変化点となることが論じられる。また、阪神・淡路大震災の経験と反省から過去の大地震や津波についても自然災害としてだけでなく、一歩踏み込み、その時の人間の行動や社会の変化をもたらすものとして、しっかりと調査することが歴史学者の使命であると説いている。著者は歴史理解の根本課題として、人と地域の変化を発見することの重要性を強調する。それは、歴史にはそれが展開する場所があり、人がいて初めて成り立つものだとの認識に立つからである。本書においては、そうした人や地域の変化を見つけ出すために著者自身が格闘し、気付いた要点が惜しげもなく語られる。本書は、著者の実践と反省の上に鍛えられた歴史観にあふれるもので、歴史研究者の道を歩もうとする若い方たちにとっての珠玉の手引書というだけでなく、既に歴史研究者としての道を歩んでいる方々にとっても座右の書となるものである。

*目次紹介*

刊行にあたって

1研究活動の変遷と史学認識

はじめに

第1期 公害問題史と近代和歌山地方史の解明へ(1971~81年)

第2期 近代大阪史研究への挑戦と方法の模索(1981~94年)

第3期 歴史学の根本課題への反省とそれが噴出する場の認識へ(1995~2006年)

第4期 市民との協働、軍事・戦争史への挑戦(2006~現在)

2歴史学の基本視点

はじめに

 1、史・資料の調査と歴史に対する問題意識

 2、先入観への気付きから歴史認識の転換へ

 3、歴史の論点と現場

 4、歴史を知るということ、補足いろいろ

3講演記録 公害・環境問題の歴史と地方史研究

(前置き)

1、公害・環境問題とは何か

2、地域社会の歴史的変遷と公害・環境問題

おわりに

4著述推移の概略一覧

索引

訃報 代表取締役小笠原正仁逝去のお知らせ

弊社代表取締役小笠原正仁は、かねてより療養中でしたが、令和5年9月25日に永眠いたしました。

葬儀につきましては故人の遺志に従い、近親者のみにて執り行われましたのでご報告いたします。

今後も故人の遺志を引き継ぎ運営して参る所存でございます。

至らぬ点も多々あるかと存じますが変わらぬご指導を賜りますようどうぞよろしくお願い申し上げます。





『親鸞』(初版第一刷)に誤植がありました。お詫びして訂正いたします。

『親鸞』に誤植がありました。お詫びして訂正いたします。

60頁5行目 施行 → 思考

62頁9行目 職法規 → 織豊期

64頁最終行  円徳寺文書(挿入)

65頁2行目 □ → (宛所の抹消箇所)

65頁5行目 一翰ヲ → 一翰を

65頁13行目 世を譲由 → 世を譲候由

65頁14行目から15行目 日中々之儀は、難計世上之躰にて候間 → 中々不及沙汰候、まつまつ、開山今日まて無恙事有難候、後日之儀は、難計世上之躰にて候間、

65頁後ろから2行目 命あらんかきりニ → 命あらんかきりハ

67頁3行目 共生 → 強制

68頁4行目  豊臣秀吉書状(挿入)

71頁9行目 進上 → 心情

71頁最終行 一因 → 因

74頁12行目 譜請 → 普請

74頁最終行 (札折紙) → (札紙書)

お問い合わせ、ご注文メールの不具合

ただ今、お問い合わせ、ご注文のメール送信をしていただいても、こちらに届かない事例が起こっています。送信後、1週間以内に返信がない場合は、お手数ですが、aunsha8951@gmail.comにメールをお送りくださいますようお願い申し上げます。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。どうぞよろしくお願いいたします。

親鸞 尊厳・平等の念仏

編著者:芳滝智仁 武田達城

定価:本体価格1,000円+税

2023年9月15日発刊

一世を風靡した一向一揆起源論。その後の検証により、実証根拠を失ったとされているが、いまだに宗教と政治の重要な課題は提起されたままである。法の支配と民衆自治、基本的人権の意義を見出すのである。

はじめに………………武田達城 
親鸞の念仏と被差別部落起源論………………芳滝智仁 
「一向一揆起源論」とその論理構造………………小笠原正仁 
石山本願寺合戦と部落の成立………………石尾芳久 
あとがき………………神戸 修

カバーイラスト:巻来功士

夏期休業

2023年8月11日(金)から16日(水)まで休業いたします。

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版元社主のええカゲンな本の紹介 その三

牧英正著『差別戒名の系譜――偽書「貞観政要格式目」の研究』を読む

 お盆も近づいて(8月盂蘭盆会の関西)そろそろ過去帳を出して、父親の法名は何だったかと見ていると、お父さんはまだホームで健在よと妻の声。

 コロナ禍のせいにしてはいけないが、本当に人々の関係を断ってしまった、この数年です。

 それで、今回はその法名・戒名というわけのわからない仏教的習俗を社会的差別秩序に貶めた「差別戒名」についてのご著書です。

まず、戒名の構造からの解説が丁寧にあります。これは葬儀の際に法名を授与する僧侶でもここまで説明はできません。

「1章いわゆる差別戒名 1 戒名」において、「広い意味では、狭義の戒名に道号がつき、院号と位号を加えたものを戒名とよんでいる」とされ、以下「典型例」として「○○院(院号) ☐☐(道号) △△(戒名) ××(位号)」というよく知られている事例をあげておられます。そして「浄土真宗の事例」として「○○院(院号) 釋(釋尼)△△(法名)」を挙げられ、戒名ではなく、法名とされているのはさすがである。これはお盆のときにお参りにこられたお坊様にお聞きください。

 ちなみに、「僧侶の道号(字)+戒名の事例」として「一休(道号)宗純(戒名)、夢窓疎石、雪舟等楊」を挙げ、つづいて、「位号」として「居士(男性)/大姉(女性)/信士(男性)/信女(女性)/禅定門(男性)/禅定尼(女性)」とあげられる。それらの違いについては、「それぞれ生前の位階、性別、信仰の深浅などが反映する」とされています。

 「2 上下の置字」の説明をされ、それぞれに「仏果証得の深浅によって書き分けられる」という説明をされています。ここまで一般的な戒名(法名)のつけ方の解説です。

そして本題、「『無縁慈悲集』(浄土宗)における「位牌」の書き分け」について「天皇>三台槐門(日本において、太政大臣、左大臣、右大臣)←令制官職>諸宗派出家の位牌、山伏の位牌、神祇家の位牌、尋常(平民)の位牌>三家者位牌」を引かれている。たしかに、それら戒名マニュアルでは、「位牌上之置字目安ノ事」として、故人の地位に応じた用例を示しているのである。「示寂・妙寂・圓寂は、上々の尊宿に用い」「帰心・登真は、上々の僧に用いる」さらに「逝光・帰寂は中の上に用いる」そしてずっと下がって「連寂」は「畜生男女・皮剝」に用いる「上の置字」とされ、続いて「四二種類の下の置字をあげているものの、ここにはとくに差別的な下の置字はみられない」とされるのです。差別戒名が一般的な「差別的戒名」ではなく、被差別民(穢多身分)につけられたものが、重要です。

そこで牧先生は、「3 被差別部落の戒名」として「柴田道子『被差別部落の伝承と生活――信州の部落・古老聞き書き』による指摘」をあげて「朴男・朴女・革男・革女・僮奴・僮僕」を引かれます。そして「戒名の階級」として柴田氏の「禅定門―信士(清信士)―居士(大居士)―庵号―軒号―院号―殿号」についての言及「個人におくる戒名に階級をつけること自身、おかしなことだが、戒名は個人やその家の社会的身分・役職・経済力・菩提寺への奉仕の度合によってきめられているようだ」とのことです。ただし、解放運動の偏りか、長野では、北信地方での調査が中心で南信の調査報告の欠如があることを指摘されている。また、差別戒名の一覧を作られ、「差別戒名の定型からバリエーション」(23頁以下)を示されている。これはこれで圧巻です。

 そして戒名のマニュアルの一つである「禅門小僧訓」(無住道人による聞き書きで、穢多身分への差別戒名の根拠として「餌取 穢多之事に『貞観政要格式目』「因て仏経祖規になきことにても、国法なれば彼れによるべし」と、『貞観政要格式目』をあげてそこでは、国法ということを、まったく無批判に受け入れているのです。ただし、『貞観政要格式目』には国法であるという明確な記述はありません。

 そもそも『貞観政要格式目』とはどういう書物なのでしょうか。牧先生の筆と探求心がさえわたります。「小笠原君ね、そういう脚色しても学問は地味なものなのよ」と院生時代のお教えが身に染みわたります。

「2章 偽書『貞観政要格式目』」において、本書が「偽書」であることを証明するのです。喜田貞吉博士の批判をひかれ、本書の評価はそれに尽きると述べられます。「しかし、そのおどろおどろしい名前に、後世の僧侶たちの多くが国法ならば従わなければならない、と考えた。そうなると、たんに偽書だといって無視するわけにはいかない」と牧先生はのべて、「三家者ノ位牌」の記述→被差別部落の起源にかんする俗説の形成に影響をおよぼしている。『勝扇子』『享保世話』などの引用例をあげられる。そして「同書が後世の戒名の様式におよぼした影響は決定的ともいえる」(41頁)

 牧先生の方法論は、偽書である『貞観政要格式目』の写本や板本の比較におよびます。そして、オーソドックスに異同を比較することで原本の復元を試みられますがかなり困難であることに気づかれるのです。(46頁)

諸本の違いがあまりに大きいからなのです。48~49頁の比較の一覧表でもわかるように、単なる誤記ではなく、意図的に編纂されたものだとも指摘されています。(52頁)

差別戒名についての厳しい指摘もさることながら、本書をよく読めば、差別戒名と特別に作られているわけではなく、すでに仏教界において社会的格差を表す戒名が体系的に既に用意されており、それに「三家之者」(被差別身分)が付け加わっただけであり、「偽書」が「利用」されたと言えなくもない結論をほのめかされている。

 本書は偽書であることは間違いないのですが、それではなぜここまで支持されたのかです。写本がたくさん作られただけでなく、編纂、改変まで行われているのです。それもそれらの宗旨に都合よくです。

 日本仏教は古代から論争のテーマに事欠かず、仏典に対するテキスト・クリティークは仏教伝来時から厳しく行われています。有名な、徳一の最澄や空海への攻撃はまさに原典批判を基とするもので、曖昧な批判は行われていません。

聖徳太子の法華経理解も六朝の教養の粋とされています。そのような議論が行われているところでなぜ、安易に国法であることが承認され、そのことが無批判に受け入れられたのでしょうか。それは、その僧侶の教養云々ということではなく、身分差別あるいは身分秩序に関わることについて、社会的に言及を許されないということではないのでしょうか。つまり、「三家之者」がなぜ存在するのか、どうしてそのような職能が分類されるのかということについてはまったく議論の余地がない、秩序をそのまま受け入れ、戒名授与という形式で、世俗秩序をそのまま仏教的に受容しているのでは。

 つまり『貞観政要格式目』という「偽書」(奇書)が日本独特の身分秩序を仏教的に受容するために必要不可欠となったということではないのか。つまりは、仕方なくではなく、好都合な書が現れたということであろう。でっち上げたのかどうかは不明であり、その証拠はありません。しかし、牧先生の実証によれば、1400年代初頭に本書が現れ、そしてその後しばらく話題に上がることなく、江戸時代以降盛んに写本などが作られる。つまり、必要になったのである。

牧先生はむすびの117頁以下に重要な指摘をされています。『貞観政要格式目』の登場と利用が、寺院や教団が幕府の支配下にあることが公になったと時期と暗合するのです。差別の制度化について、幕府と教団は相前後しながら身分差別の制度化をしていくことなります。

 そういえば、牧先生とのお別れは暑いこの頃でした。来年で7回忌になります。南無

版元社主のええカゲンな本の紹介 その二

(この追悼文は韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議年報2023に掲載いただいたもので、あらためて阿吽社のHPでご紹介いたします。)

 仲尾宏先生が本年1月1日に亡くなられました。86歳でした。それまで電話などでお話をしていた私にとって、突然の訃報で驚くしかないことでした。

 仲尾先生とは、先生の晩年の出版『京都の渡来文化と朝鮮通信使』の発刊を通じて親しくやり取りをさせていただきました。この本は、先生の出された『京都の渡来文化』(淡交社1990年)が絶版になったので弊社にお声がけいただき、増補改訂版として出させていただいたものです。増補改訂版といっても出版して20年の研究成果を盛り込まれ、新たに書き下ろした章も多く、80歳を過ぎてのその精力的な研究姿勢に驚かされました。

 それまで、私は、仲尾先生を書籍や講演会などでしか知ることはなかったのですが、本会の京都、滋賀での朝鮮通信使の足跡を辿るフィールドワークのお手伝いをさせていただき、先生と親しくさせていただき、私のことも知っていただいたように思います。

 とくに近江八幡では、私の所属する浄土真宗本願寺派の別院があり、朝鮮通信使の書が残されていますが、仲尾先生のツアーだからと声掛けするとすぐに許可が下りて、日曜日で法事などで忙しい職員が別院に出てきて、対応してくれました。これも仲尾先生のお人柄と熱心な資料保存のご協力の賜物です。

 先生の研究業績については、日朝・日韓の関係史研究が有名で、さらには人権問題への取り組みが紹介されています。

 たしかにその通りで、著書のテーマもそのことがうかがえます。しかし、先生の著書を編集させていただき、打ち合わせなどでお話をいただいていると、私自身研究者の末席にいる者からすれば、その研究対象の広さと深さは私たち世代の恩師のそれです。

 日朝・日韓関係史が先生のご専攻ですが、叙述は古代から現代に及び、研究対象はアジアの文化交流史といっても過言ではありません。その裾野の広さに舌を巻くばかりでした。

 日本という東の辺境の島に、多くの人々がやってきて、独特の文化を構築しますが、その研究のために、裾野を広げておられていました。

 じつは、書籍編集の打合せの際に、文化交流や人の交流などで、日本に多くのものがもたらされたことや学びがあったことについて、その当時、弊社で別に監修事務をさせていただいた最澄と空海のことをとりあげた、おかざき真里著『阿・吽』小学館での編集方針と重なり、大いに意を強くさせていただいた記憶があります。

 それは一言でいえば、日本は国際社会であったということです。もちろん、前近代における「国際」という場合の国家はあいまいな使用方法となりますが、言い換えれば東アジアにおいて生まれた多文化社会だったということでしょう。ややもすると伝統という名の下に歴史を遡り、大和民族の精神や起源があるかのような錯覚をしてしまい、またそのような錯覚を利用した政治的な書籍も出されています。しかし、歴史事実を虚心坦懐に考察すればそのような考えはひとたまりもなく吹き飛んでしまいます。先生の関心はそのような、事実を解明するという点にあり、研究対象も単に二つの地域の交流に限られることなく、広く世界の文化の交流を前提とされているものでした。学問研究からすれば当たり前のことですが、最近の研究のあり方の縮み具合やテーマの矮小化について、苦言を漏らされていたことを思いだします。

 先生の文化交流史の著述は朝鮮通信使に限定されていますが、それはある意味、日朝関係史の良き時代を示しており、日本がそれらの文化に学び、尊重したことを示しています。もちろん、その後の悲しい歴史にも言及されておられます。それぞれに残された文物には歴史があり、それを正しく評価継承することが、これからの交流を確実なものとしていくでしょうとも教えていただきました。欲を言えば、個人的にもっと先生から学びたかった。コロナ禍で先生のご年齢を配慮して、次の著書の打合せを先延ばしにしたことが悔やまれます。

 先生、ありがとうございました。

京都の渡来文化と朝鮮通信使

仲尾宏著

定価:本体価格1,800円+税

2019年6月15日発行

版元社主のええカゲンな本の紹介 その一

以前からうちの会社を一人で切り回してくれているMさんから「シャチョー、会社のHP見に来る人に少しでも読みたくなるような紹介文を書いてくださいよ」とおしりをたたかれまくっているOです。よろしくお願いします。それでとうとうこのような紹介文を掲載することを決心しました。著者の皆様には、紹介順序に他意はございませんので、これからもよろしくお願い申し上げます。

 それで第1回はなんと東大寺長老の森本公誠先生です。

 実のところ、東大寺のKさんからご紹介を受けたときに東大寺とイスラム文化との関係なのかという先入観をもっておりました。だって、知人のN先生でさえ、「森本先生がそういうご本を」と仰ってましたからね。たしか大阪の焼き肉屋の謎会議で。

 それはいいのですが、東大寺寺務所でお話をうかがい原稿をいただくと、戦後のマルクス主義史観を築き上げた石母田先生が吹っ飛びました。

 私は大学院の頃に泣きながらヴェーバーを読んでいたのですが、そのおかげでたいへん読みやすうございました(故恩師に感謝申し上げます)。とくに、ヴェーバーのプロ倫のヒントになったというイェリネックの助言、人間の歴史(文化の転換)において宗教・信仰に由来しないものはない(キッパリ)ということを彷彿とさせるものだったからです。というより日本に入ってきた仏教が300年を経ずしてこれほどの思想的原動力になっていたのかという衝撃だったのです。法然の出現を「中世の衝撃」とされた阿満先生の思想的前提はここにあり、大乗仏教は変質などせず、その本質をさらに発展させたんや。と思った次第です。

 寺奴とは大寺院での職能集団のコミュニティを意味するということなのです。これらの人々の存在が寺領荘園にも影響を与えていくと考えていくべきだ、と後半は私の妄想です。

 律令制下における身分の一つである「奴婢」は奴隷ではなく、ましてや現在の被差別部落につながるものでは決してないとされています。

 それではいったいなんだったのか。もちろん、聖武天皇でもわからなかったと思います。いわゆる奴隷の類とは認識されていなかったようです。あくまでも貴重な労働力であり、そのために暮らしが保証されているのです。ただ、逃げ帰った事例もありますが、ほとんどが定着し、子どもの奴婢やそこで生まれた奴婢はちゃんと職能集団の一員として教育され、働いているのです。文字まで教えられています。19世紀のイギリスでは使い捨て労働力だったのに。

 基本的に奴隷は分断され主人への集団抵抗を阻止されるものですが、東大寺では寺の中の奴婢コミュニティが奨励され、もちろん逃亡予防だとも言われますが、過酷な労働ばかりで人は定着しません。「遊びをせんとやうまれけむ」なのです。人の労働が精神的にも追及されるようになったのは携帯時計の普及だと私は考えています。つまりかなり近代的支配の結果だと。セイコー・シチズンが労働者の連帯の敵だとは申しておりませんので。

 古代・中世では労働はまだまだ遊びです。プロ倫でもそのようなことが書かれていますね。つまり、大仏造立のために集められた奴婢がじつは職能集団に成長していき、寺領荘園における経営とも深くかかわっていったのではないかということです。

東大寺奴婢集団のサバイバル――慈悲につつまれて

森本公誠著(東大寺長老)

定価:本体価格2,500円+税

2021年10月31日発行

奈良時代の東大寺附属奴婢を東大寺文書の詳細な再検討によってこれまでの古代奴隷制経済理論のくびきから解放し、寺院支配下における新たな古代共同体形成過程の類型を示す意欲作。

銃後の戦後

横山篤夫著(元関西大学非常勤講師)

定価:本体価格4,500円+税

2023年7月発刊

忠霊塔建設運動、遺族への物心両面への補償などが戦争遂行の機運を高めたが、敗戦後その課題にどう取り組まれたのかを明らかにする。

*目次紹介*

序章 戦地の忠霊塔と夫が戦没した妻たちの思い          
 大阪の忠霊塔建設―第1部・第1章解題― 
 日本軍が中国に建設した13基の忠霊塔―第1部・第2章解題― 
 シンガポールの忠霊塔―第1部・第3章解題― 
 戦没者遺骨と陸軍墓地―第2部・第1章解題― 
 旧制岸和田中学校の31通の公葬弔辞―第2部・第2章解題― 
 なぜ戦後各地に軍人墓地が作られたのか―第2部・第3章解題― 
第1部 日本軍が戦地に建設した忠霊塔
 第1章 大阪の忠霊塔建設                  
  はじめに 
  第1節 大日本忠霊顕彰会成立前の忠霊塔 
  第2節 顕彰会の成立、発展と挫折 
  第3節 顕彰会成立発展期の大阪の忠霊塔
  第4節 顕彰会事業挫折後の大阪の忠霊塔
  おわりに 
 第2章 日本軍が中国に建設した13基の忠霊塔           
  はじめに 
  第1節 陸・海軍墓地と忠霊塔 
  第2節 満州に建設された10基の忠霊塔の内容 
  第3節 戦地中国に建設された3基の忠霊塔 
  おわりに 
 第3章 シンガポールの忠霊塔                    
  はじめに 
  第1節 課題の設定 
  第2節 「共栄圏に忠霊塔建設」の第一歩としてのシンガポールの忠霊塔 
  第3節 挫折した共栄圏の忠霊塔建設運動 
  第4節 シンガポールの忠霊塔に納骨された遺骨と「昭南本願寺」 
  第5節 シンガポールの忠霊塔の終焉と遺骨の行方 
  第6節 戦没者遺骨に関する国際法と日本軍の対応 
  おわりに 
第2部 銃後の戦後
 第1章 戦没者の遺骨と陸軍墓地                   
  ――夫が戦死した妻たちの60年後の意識から――
  はじめに 
  第1節 検討資料と留意点 
  第2節 陸軍墓地 
  第3節 遺体・遺骨と陸軍墓地 
  第4節 忠霊塔と陸軍墓地 
  第5節 夫が戦死した妻たちの存在
  第6節 「名誉の戦死」と荘重なセレモニー 
  第7節 転機となったガダルカナル島戦 
  第8節 ガ島戦後終戦までに夫が戦没(1) 
  第9節 ガ島戦後終戦までに夫が戦没(2)
  第10節 戦後に夫が戦没した事例 
  おわりに 
 第2章 旧制岸和田中学校の31通の戦死者公葬弔辞   
  はじめに 
  第1節 公葬の弔辞について 
  第2節 中国「匪賊」との戦いで戦死 
  第3節 ガダルカナル戦で戦死者詳報もなし 
  第4節 兄弟で岸和田中学校・陸士を卒業して戦死 
  第5節 伊178号潜水艦と共に沈んだ軍医 
  おわりに 
 第3章 なぜ戦後各地に軍人墓地が作られたのか          
  ――泉佐野市の事例から考える――
  はじめに 
  第1節 戦没者記念塔の建設 
  第2節 泉佐野市域の戦没者と遺族 
  第3節 壇波羅浄園の完成と慰霊塔 
  おわりに 
 あとがき 
 索引

「英霊」の行方

横山篤夫著(元関西大学非常勤講師)

定価:本体価格4,500円+税

2023年7月発刊

私たちは「英霊」をどこへ置き忘れてしまったのか。戦争遂行のために利用された霊魂は、歴史研究者たちの手により、旧真田山陸軍墓地において、戦争遺跡からいまや平和の礎としてメッセージを発している。

*目次紹介*

序章 軍事史研究の進展と旧真田山陸軍墓地            
 はじめに 
 旧真田山陸軍墓地の沿革と戦後の歩み―第1・2章解題― 
 納骨堂はどのように建設されたのか―第3章解題― 
 日本陸軍にはかつて「生兵」と呼ばれた兵士がいた―第4章解題― 
 野田村の軍人墓地は今……―第5章解題― 
第1章 真田山陸軍墓地の沿革                   
 はじめに 
 第1節 真田山陸軍墓地の成立 
 第2節 招魂祭と埋葬地の分離 
 第3節 コレラの流行と真田山陸軍埋葬地 
 第4節 墓地の景観・面積の変化と地域の追悼行事 
 第5節 真田山小学校の建設と墓域の縮小 
 第6節 15年戦争と「忠霊堂」(納骨堂)の建設 
第2章 戦後の旧真田山陸軍墓地                  
 第1節 8月15日の「大阪事件」 
 第2節 大阪靖国霊場維持会の成立と祭祀 
 第3節 サンフランシスコ講和条約の発効と追悼祭祀の盛大化 
 第4節 納骨堂の修理と「大阪市立墓地公園計画」の挫折 
 第5節 祭祀担当の世代交代と旧真田山陸軍墓地の保存運動 
 おわりに 
第3章 納骨堂はどのように建設されたのか            
 はじめに
 第1節 大阪府仏教会の成立と性格 
 第2節 護国神社と忠霊塔建設運動 
 第3節 真田山陸軍墓地の忠霊塔建設 
 第4節 ガダルカナル戦後の戦没者分骨合祀 
 おわりに 
第4章 日本陸軍にはかつて「生兵」と呼ばれた兵士がいた 
 はじめに 
 第1節 生兵とはどういう存在だったか 
 第2節 真田山陸軍墓地の生兵墓碑 
 第3節 生兵の死亡年別人数と脚気 
 第4節 コレラの流行と生兵 
 第5節 生兵の死亡場所と生兵の期間 
 第6節 生兵の出身地別と家業など 
 第7節 溺死した生兵 
 第8節 大阪陸軍監獄署で死亡した生兵 
 おわりに 
第5章 野田村の軍人墓地は今……              
 はじめに 
 第1節 野田村の概況 
 第2節 墓碑建立の経緯 
 第3節 旧真田山陸軍墓地の野田村墓碑 
 第4節 真田山での祭祀について 
 おわりに 
あとがき 
索引 


年末年始休業のお知らせ

2022年12月28日(水)~2023年1月4日(水)まで休業させていただきます。

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同朋教団のかなしみ

「寺中」差別の現実から

同朋の会編

定価:本体価格1,500円+税

2022年10月10日発刊

寺中制度という不条理を告発する。本願寺教団という巨大組織を支えてきたのは、御同朋という親鸞の精神ではなく、権威主義的支配の事実であったことを明らかにする。伝統と権威の中で信仰は悲鳴を上げる。

同朋教団のかなしみ――「寺中」差別の現実から

はじめに                                  

第1部  「寺中」差別についての問題提起                 

1 「寺中」差別問題12の問い

2 「寺中」についての論文   

(1)「同朋の会」   

(2)「僧侶間の差別意識の克服に向けて――『上寺・下寺』問題の視点から」   

(3)「〈研究ノート〉教団内における『寺中』差別の実態」

3 「寺中」寺院の声   

(1)「寺中」寺院坊守の声   

(2)「寺中」寺院僧侶の声 

4 「同朋の会」座談会――現状・課題・展望 

第2部  「寺中」差別について考えるための参考文献・資料       

1 「同朋の会」実施アンケートの集計・報告書   

(1)教団内における「寺内」「寺中」問題に関するアンケート集計報告書  

(2)「寺内・寺中」問題教区別実態調査(5教区)集計   

(3)「寺中」寺院数減少把握のための調査(5教区)集計  

(4)「寺中」寺院における役員ならびに財政等に関する実態調査集計報告 

2 「寺中」差別についての参考文献紹介   

(1)『同朋会運動が見過ごしたもの――真宗大谷派における「下寺問題」とは』   

(2)『新版真宗教団と「家」制度』  

(3)「真宗寺院にみる廃寺の現状――鹿児島県、富山県、広島県の事例から」 

3 「寺中」制度に関わる歴史・法制資料   

(1)「宗規綱領」について   

(2)「宗制・寺法(寺法細則)」について   

(3)「宗教制度調査資料」について   

(4)「宗教団体法と新たな宗制」について   

(5)「戦後の新法制度(新宗制・宗法、新宗憲)」について 

4 その他の参考文献・資料 

5 「同朋の会」会員の研究・報告の記録 

あとがき……そして 

ツレが逝った後に起きることー残された男の生き方

飯田英晴著(藍野大学副学長)

定価:本体価格1,500円+税

2022年9月30日発刊

昭和の男たちよ。これが令和のあたらしき挽歌である。
ツレに先立たれた昭和の男―団塊の世代の死亡率の高さは本書にもあるが、テレビでも特集されたり、社会課題でもある。
戦後の高度経済成長を支え、ジャパンアズNo1を達成した男たちの燃え尽きた姿というのではあまりに悲しすぎる。
それはただ、そのような働き方、暮らし方の呪縛から解放されていないだけなのである。それが、証拠に、戦後を同じように過ごし、支えてきた女性は夫に先立たれた後、豊かな老後をそこそこ「満喫」している。それは解放されているが故である。
男たちが何に縛られているのか、どうしたら解放されるのか。
ツレに先立たれた悲しみから立ち上がっていくプログラムと同時に、これまでの自分自身の人生の呪縛からの解放にも挑んで、最後の人生を荘厳していこうではないか。

*目次紹介*

はじめに

一章 「別れ」を生きる 

1 悲嘆反応とグリーフケア  四苦八苦/グリーフワーク 2 悲嘆の経過  悲嘆からの回復/否認と孤立/怒り/取り引き/抑うつ/受容 3 悲嘆の時のいろいろな変化  悲嘆の諸相/身体面の変化/心理・精神面の変化/行動面の変化 4 悲嘆の時のいろいろな変化  悲嘆の諸相 5 悲しみの淵からの立ち直り  現実を認める/素直に感情を出し、悲しみ寂しさを語る/人生の再発見/積極的に思い出してみる

二章 「うつ」を生きる

1 抑うつ状態ないしは、うつ病について  抑うつの症状/〝うつ〟の治療 2 〝うつ〟は感情の働きの故障  症状 3 〝うつ〟の原因と症状  うつ病とは/新型うつ病/うつ病の原因/うつ病への偏見/症状の進行/意欲の喪失/ さまざまな症状/睡眠障害/仮面うつ病/思考の停滞 4 〝うつ〟の時の考え方の特徴  共通した症状/自分をいたわる/悪く考える癖 5 うつ的思考から抜け出す  否定的自動思考/要求のレベルを下げる/他者との比較

三章 「ストレス」を生きる

1 ストレスとは  2 ストレスの受けとめ方  3 ストレスと性格  4 ストレスが身体、心に及ぼす影響  ストレスによる症状/心身症とは/心身症の事例 5 ストレスへの対処  まずいストレス対処/うまいストレス対処*3原則

四章 「人生」を生きる                          

1 くよくよ心配しない生き方  湧きいずる心配のタネ/辞世の一言 2 肯定的な生き方  生きる信条/「いい人生だった」 3 ちょっと理想を下げた生き方  イマドキのお年寄り/家族へのつけ/元気至上主義の弊害/一病息災/老いを受け 入れる/生活の変化を受け入れる 4 こだわらない生き方  文句を言わず/老いを認め/あるがままで/こだわりは捨てる/計画経済/集え!同好の士/  生活の合理化 5 怒らない生き方  キレやすい老人/怒りのコントロール/自分の怒る時を知る/違いを認める/ そもそも健康に悪い/自分を振り返る 6 なるべく人に頼らない生き方  一人でできるもん/諦めたらそこでゲームセット/理想のお年寄り/頼る時は頼り ましょう 7 明るく楽しい生き方=ポジティブに考える  健康な心/気持ちを明るく保つ/性格の変化/好印象を作るコミュニケーション術 /表情を豊かに/おしゃべりの効用 8 丁寧な生き方  うつ病の治療/死生観/取り越し苦労を乗り越える/再び〝うつ〟になると(2章 参照)/一度立ち止まる 9 笑って過ごす生き方  いい逝き方/孤独死/笑いの効用/オヤジギャグで仲良く 10 誰かの役に立つ生き方  生きがいを感じて/生涯現役/無為に過ごす贅沢/楽しさは全力で/まずは夢中になること 11 自分らしい生き方 12 普段から頭を使う エピソード記憶 13 死に急ぐこと勿れ 自殺統計/高齢期の複合的問題/糖尿病と自殺/生活不安/自殺予防は本人だけでなく 14 少しだけ人の世話になった逝き方 人生は個人一人のものか/ノーマライゼーション 15 穏やかな逝き方 人生の最期を迎える/お墓は不要?/悔い改めよ、素直に 16 死の準備 死に方を選ぶ/葬儀のあり方/死に場所/曖昧な喪失

五章 「最終章」を生きる

1 じつは睡眠が一番大切  よい睡眠のための9ヶ条 2 エンディング・ノートへ書き残しておく内容 

あとがき                                 

夏期休業のお知らせ

2022年8月10日(水)から16日(火)まで休業いたします。

ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

毎日新聞(京都面)で『八木先生の京都覚え書き-洛中・洛外 いま・むかし』を紹介していただきました。(2022年4月15日朝刊)

軍隊と戦争の記憶

旧大阪真田山陸軍墓地、保存への道

小田康徳著(大阪電気通信大学名誉教授)

定価:本体価格3,500円+税

2022年5月5日発刊

 戦争遂行のために作られた旧真田山陸軍墓地は、敗戦後の「平和」の中で人々の記憶から忘れ去られようとしていた。この本は戦争のための軍人墓地を真の平和の記念碑として未来に残すため葬られた人々、遺された人々の声を聴きながら、「戦死者追悼」の意味を問う、地道な努力の記録である。

第1部 墓地を知る

1 旧陸軍墓地の「発見」

(1)旧真田山陸軍墓地との出会い

(2)旧真田山陸軍墓地と日本の近代

(3)真田山に眠る2人のドイツ兵

2 研究会の始まりからNPO法人の設立へ

3 医学と陸軍――史料紹介・軍医監堀内利国の墓碑から見る明治前期の脚気対策

4 納骨堂の調査

(1)納骨堂悉皆調査の意義

(2)科研費調査申請書

(3)納骨堂のカード作成・写真撮影を終わって

(4)納骨堂被葬者データベースの完成と今後

(5)納骨堂の調査を終えて

(6)科研費調査の報告書

5 調査の継続と視野の広がり

(1)清国兵の墓碑6基――その基礎的理解のために

(2)真田山高等家政女学校の陸軍墓地参拝写真

(3)真田山陸軍墓地、調査の現段階

(4)会報『真田山』が第50号を迎えて

(5) 落下した墓碑片の調査と保管について

6 死者の記録=「埋葬人名簿」のデータ化から見える草創期入営者の実態

7  軍都大阪の形成過程――陸軍の創出、訓練、病気そして戦争、陸軍墓地

第2部 保存の理念を求めて

1 旧陸軍墓地保存の基本視点――大阪市と維新の会の動きを前に

2 陸軍墓地、保存の課題――なぜ?そして、どのように?

3 旧陸軍墓地を今に生かす道――財務省の予算措置決定を受けて

4 墓地の実相と戦後の歴史をふりかえって考える

5 20年の活動から気付くこと

資料

索引

朝日新聞デジタルで『東大寺奴婢集団のサバイバル』を紹介いただきました。

八木先生の京都覚え書きー洛中・洛外 いま・むかし

八木晃介著(花園大学名誉教授)

定価:本体価格2,200円+税

2022年3月10日発刊

京都は「花の田舎」か、それとも? 社会学者の問題意識によってその深奥まで浮き彫りにされる京都の現実が追求される。毎日新聞連載コラム堂々の完結。洛中・洛外のさまざまな歴史やイマドキの事情がじっくり読める一冊。あたらしい「京都の歩き方」です。

目次紹介

まえがき
第1章 京都で琉球沖縄を学ぶ
1 沖縄との距離――非戦思い、絆高める「塔」 
2 経ケ岬の米軍レーダー基地――住民の心身・文化踏みにじる 
3 念仏踊りとエイサー踊り――京都と沖縄の懸け橋、檀王法林寺 
4 「すべての米軍基地はいらない」――沖縄とつながり強め 
5 〝学知〟による植民地支配――琉球人遺骨返還問題 
6 琉球沖縄化する京都――経ケ岬の米軍基地と住民 
7 経ケ岬も琉球沖縄化――在日米軍とコロナ感染 
第2章 戦争と京都との距離
1 「明治150年」の違和感――戦前の歴史美化につながらぬか 
2 今も生きる?「松陰」思想――京都御苑・蛤御門で考える 
3 山本宣治と治安維持法――「共謀罪」法を認めない 
4 強制疎開――被害と加害の思想が交錯 
5 〝軍〟の本質は〝暴走〟――原爆投下、予定地の京 
6 戦争体験の思想化――舞鶴引揚記念館と浮島丸殉難の碑 
7 戦争の遺跡と博物館――被害と加害の声を聴く 
8 京都における朝鮮戦争――「京大生小野君の占領期獄中日記」 
9 京都と東アジア情勢――経ケ岬米軍基地に注目を 
10 周恩来詩碑と日中友好――尖閣棚上げの〝模糊〟に一点の光 
11 731部隊と遺骨問題――医学・科学の戦争責任は 
12 優生思想の差別性問う――京都ALS女性の死亡 
第3章 京都における差別の歴史と現実
1 「鴨の河原」のエネルギー――境界の「異風」が生み出す文化 
2 基層文化を担った声聞師――陰陽師と差別問題 
3 龍安寺石庭の謎――中世賤民の芸術を想像 
4 「鬼」から差別を考える――大江山の酒呑童子 
5 コロナ禍と差別問題――伝染は「触穢」なのか 
6 「われら山水河原者の末裔なり」――柳原銀行記念資料館開設20年 
7 同対審答申から55年――京都発、行政闘争の光陰 
8 米騒動と京都――水平社創立の歴史的必然性 
9 「水平社宣言」95年――人の世に熱あれ、人間に光あれ 
10 部落差別の本質を考える場――朝田善之助記念館が完成 
11 空洞化する被差別部落――楽只小閉校に思う 
12 「竹田の子守唄」その盛衰――被差別部落、闘いの歌 
13 文字の奪還から感性回復――識字運動と人間解放 
14 野宿の人々との連帯求めて――きょうと夜まわりの会 
第4章 東アジアの中の京都、そして在日コリアン
1 東九条マダン――多文化の共生、交流求め 
2 コリアンと部落民衆の「再会」――東九条マダンの挑戦 
3 大変動の中のウトロ――在日の生きざま〝正しい歴史認識〟を 
4 朝鮮学校のヘイト襲撃10年――市民の対抗活動に期待 
5 ヘイトスピーチと京都――法的規制と市民運動が重要 
6 在日コリアンの「恨」――「聴く」は重荷の分かち合い 
7 コリアン文化の粋、伝え――高麗美術館、創設30周年
8 伝統産業支えた在日朝鮮人――友禅染と西陣織 
9 「耳塚」のおぞましさ――秀吉を利用した明治政府 
10 朝鮮通信使――友好と親善 互いに真実をもって交わる 
11 「京都らしさ」の虚像と実像――祇園祭も平安京も渡来系
第5章 京都で反原発を考える
1 「3・11」から6年――続く自主避難者の〝三重苦〟
2 原発賠償京都訴訟判決を前に――尊重すべき「逃げる」権利 
3 京都で「家族型保養」軌道に――福島原発事故から9年 
4 幼稚園への保養留学――脱原発、視野に入れながら 
5 京都も「被害地元」に――福島・原発事故8年
6 〝新たな安全神話〟か――京都府の放射性物質拡散予測 
7 小水力発電――脱原発・脱化石燃料の文化へ 
8 資源の自然循環を実践――南丹のバイオガス発電 
9 〝キンカン行動〟400回超す――脱原発社会の実現求め 
第6章 学びの街・京都の過去と現在
1 京都学連事件――治安維持法類似の〝共謀罪〟 
2 尹東柱生誕100年の現在――治安維持法と共謀罪法 
3 「貧乏物語」100年――波瀾万丈・河上肇の求道 
4 京大・滝川事件から85年――強権弾圧から規律管理に 
5 京大「タテカン問題」――都市景観と表現の自由考える 
6 京の「在野学」と町衆――伊藤仁斎と石田梅岩の場合 
7 新村出博士の旧邸――壮観、『広辞苑』づくりの現場 
8 「高校三原則」崩壊40年――〝15の春〟は泣かないか
9 戦争体験の継承――「伝記作成プロジェクト」に期待 
10 増える「子ども食堂」――地域共同体の交流拠点 
第7章 京都の宗教文化の現実性
1 「怨親平等」の宗教文化――平和の視点、死者と対話 
2 「造反有理」過去と現在――平将門と京都 
3 明智光秀と京都――謀反は歴史の進歩か反動か 
4 妙派の峰尾節堂師 百回忌――大逆事件から共謀罪法を思う 
5 「大本」教団の受難と栄光――祭政一致体制のおぞましさ 
6 いま、「大嘗祭」を考える――憲法や差別問題と関係 
7 大嘗祭への京都府の関与――政教分離求め監査請求 
8 小笠原博士とハンセン病――「隔離反対」支えた親鸞の教え 
9 洛北・岩倉の宗教・医療風土――精神保健福祉法改定案に疑問 
10 無所有・奉仕の共同体――「一燈園」思想は連綿と 
11 「縁」変革による反差別――親鸞『唯信鈔文意』770年 
12 現代〝丑の時参り〟の情念――安井金比羅宮に見る呪術と宗教
13 祇園祭、コロナで中止――神事と観光の狭間で
14 金閣寺炎上から70年――三島と水上を読み返す 
15 罪悪抱えた人間の闇問う――死刑制度と京の宗門 
16 社会的共通資本の宗教――諸宗派が矛盾なく共生
第8章 京都の文化と伝統産業
1 伝統踏まえた革新の行方――「丹後ちりめん」創業300年 
2 「木の文化」を守れ――北山丸太の危機 
3 錦ブランドの作り直し――「京の台所」再生のために 
4 「喫茶店」文化論――人間関係を映す〝時代の鏡〟 
5 なぜかパン好き京都人――京最古の「パン屋」100年 
6 市民による市民のための放送局――京都三条ラジオカフェ 
7 京響が〝還暦〟――市民の文化性向上に寄与 
8 京の古本屋事情――大学・寺院・伝統工芸と連動 
9 「京ことば」考――〝余所者〟への警戒心? 
10どもりながら生きる――「吃音者宣言」の精神、今も
11 京都人はケチなのか?――蓄財と散財の絶妙な「胸算用」 
第9章 京都は「花の田舎」か
1 『京都ぎらい』を読む――「差別論」としての京都論 
2 市美の命名権売却に違和感――立ち止まって、市民の意見を 
3 宿泊税を考える――京都は「花の田舎」なのか 
4 自衛隊への宛名シール提供――京都市は市民と対話を 
5 苦境・京のホテル事情――コロナ禍以前、政策の難点
6 京都とコロナ・パンデミック――不条理とのつきあい方 
7 社会問題としての京都――「あとがき」にかえて 

同朋運動70周年記念大会記念誌

編集・発刊:同朋運動70周年記念大会実行委員会 

定価:本体価格800円+税

2021年12月10日発行

浄土真宗本願寺派において推進されている同朋運動の70周年記念大会の記録。同朋運動70周年記念大会並びに法要は2020年12月10日に行われた。記念講演は前川喜平氏によって「格差社会の現状と子どもの課題」が行われた。(全文書き起こし)

目次紹介

主催者挨拶 同朋運動70周年を迎えて…………………………………………浄土真宗本願寺派総長 石上智康 
来賓挨拶 同朋運動70周年の歴史によせて……………………………部落解放同盟中央本部書記長 西島藤彦 
法話 同朋運動の歩み「70周年にあたり―運動の振り返り―」 ……… 一般財団法人同和教育振興会評議員 岩本孝樹 
記念大会によせて
同朋運動への軌跡…………………………………………………………近畿同朋運動推進協議会 藤本信隆 
同朋運動70周年記念大会によせて……………………………………九州沖縄同朋運動推進協議会 太田心海 
未来は同朋運動によってつくられる………………………………東日本同朋運動推進協議会理事長 藤澤正徳 
同朋運動70周年記念大会に参加して……………………………………北陸同朋運動推進協議会代表 永田寛雄 
「先師の口伝の真信」を「差別の現実」の場で明らかにする…………中四国同朋運動推進協議会 小武正教 
同朋運動を続けていくということ……………………………………………同朋運動を続ける会 岩本智依 
同朋運動70周年に寄せて……………………………………………一般財団法人同和教育振興会理事 小笠原正仁 
記念講演格差社会の現状と子どもの課題…………………………………………元文部科学省事務次官 前川喜平 

年末年始休業のお知らせ

2021年12月28日(火)~202年1月4日(火)休業いたします。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。

東大寺奴婢集団のサバイバル

慈悲につつまれて

森本公誠著(東大寺長老)

定価:本体価格2,500円+税

2021年10月31日発行

奈良時代の東大寺附属奴婢を東大寺文書の詳細な再検討によってこれまでの古代奴隷制経済理論のくびきから解放し、寺院支配下における新たな古代共同体形成過程の類型を示す意欲作。

◇目次紹介◇

 はじめに

東大寺の古文書/聖武天皇の東大寺行幸/八幡神の東大寺参拝/封戸と奴婢/古代律令制下の良賤制

第一章 藤原仲麻呂による買賤進上政策

一 近江国司解

東大寺への奴婢施入/奴婢帳目録/公式令の定め/稲と正税/正税の内訳/奴婢の対価     

二 丹後国司解

丹後国よりの奴婢進上/仲麻呂の買賤進上政策/造東大寺司/買賤進上政策の難渋

三 但馬国司解

但馬国よりの奴婢進上/奴、逃亡す

四 寺家の対応

上座安寛の不安/移の代用としての牒/奴、ふたたび逃亡す/奴の返還/婢の逃亡/婢古麻佐賣/奴婢逃亡の理由

五 美濃国司解

美濃国よりの奴婢進上/婢椋女の逃亡

第二章 寺家による奴婢の買取り

一 近江国坂田郡司解

三綱による奴婢帳分類/坂田郡立券文/立券の背景/奴婢の売買価格

二 平城京の行政組織

平城京の行政区画/平城京の行政組織/坊令から条令へ

三 京職関連文

左京一条令、解し申す/左京職移/寺家返券文の事/奴婢の試用期間と支払い猶予/文広河による進賤解案

第三章 天皇による官戸奴婢の施入

一 官戸と官奴婢

官奴司による奴婢管理/官戸と官奴婢の身分差/官奴婢の技能と業務/没官の奴婢/官戸奴婢の家族的構成

二 唐令との比較

戸令第三八条/『旧唐書』の記事/戸令第三八条の意味

三 天皇による施入指針と思想的背景

聖武天皇の意図/聖武天皇による雑戸の解放/聖武天皇の仁恕と法恩/聖武天皇の仏教への傾倒/仏教思想の深化と奴婢の解放

四 官奴司解

施入奴婢の選定/施入奴婢の年齢構成

五 施入奴婢の旧所属

所属の種類/嶋宮の奴婢/春日村/飽浪村/奄知村/広瀬村/今奴婢/大粮申請文書に見える職種別人員構成

六 選定後の手続き

名簿案を太政官へ提出/太政官から治部省へ/聖武天皇の勅の引用

七 寺奴婢共同体の創設

奴婢の再編成/元奴長佐伯伊麻呂の誕生/施入奴婢の交替/代替婢の逃亡

八 奴婢の処遇

美気女と小楓女の処遇/所属奴婢解放の手続き/逃亡奴婢の探索/奴小足の場合/婢広山女の場合/奴忍人らの場合

九 寺奴婢の仕事

(一)施入後の状況 

 大仏造立の進捗/東大寺施入奴婢の仕事/元嶋宮の奴大井/元寺家買取り奴垂水麻呂/元奄知村の常奴東人/集団の寺婢/奴婢の派遣

(二)幼少奴婢の成長 

楽具欠失届け その壱/奴婢の子供の成長/楽具欠失届け その弐/正倉院宝物貸出しに見える奴婢 その壱/楽具欠失届け その参/

正倉院宝物貸出しに見える奴婢 その弐/幼少奴婢の成長と教育/婢から女医への道

第四章 大宅朝臣可是麻呂による奴婢の貢進

一 大宅朝臣広麻呂の戸賤

奴婢寄進文書の分析/逃亡奴婢の相続と訴訟

二 可是麻呂による東大寺への奴婢貢進

可是麻呂による奴婢貢進名簿

三 東大寺による逃亡奴婢の捕捉

逃亡奴婢の探索/見来帳の一通目/見来帳の二通目/見来帳の三通目/見来帳の四通目/見来帳の五通目

四 茨田久比麻呂の控訴

茨田久比麻呂の訴状/提訴人の同定

第五章 寺奴婢の再編と解放

一 その後の寺奴婢の解放

(一)東大寺三綱牒上 

奴婢の解放/奴婢解放の手続き/新しい姓の付与

(二)従良奴婢注文 

新たな奴婢の解放/仏教政策の転換/解放された人々

二 孝謙・称徳天皇による奴婢対策

(一)官奴婢の解放 

孝謙天皇の奴婢対策

(二)薬師寺奴婢の解放 

仲麻呂の乱の論功行賞

(三)寺奴婢に賜爵 

称徳天皇の行幸

三 宝亀三年の東大寺奴婢籍帳

(一)寺奴婢調査の徹底 

光仁天皇の治世

(二)造籍の目的

僧綱からの指示/寺院側の対応

(三)官奴司解歴名との比較 

奴婢籍帳の参照

(四)編首集団の実態  

四 桓武天皇による奴婢対策

(一)仏教勢力の抑制 

桓武天皇の即位と改革/藤原種継暗殺事件/早良親王と東大寺

(二)良民と奴婢の子の身分の改定

太政官の奏上/良賤間の通婚規則の変更

(三)東大寺奴婢の解放 

東大寺三綱の請願

おわりに

東大寺奴婢のその後/『東大寺要録』編者の記述/東大寺修二会大導師祈願文/東大寺奴婢の歴史的実態

略年表

参考文献

夏期休業のお知らせ

2021年8月7日(土)~8月15日(日)は休業いたします。

ご迷惑をおかけしますがどうぞよろしくお願いいたします。

『映画「評論家」不満』

重政隆文先生の『映画「評論家」不満』が、キネマ旬報 2021年3月下旬映画業界決算特別号 の映画本大賞2020に選出されました。

仲尾宏先生が表彰されました

『京都の渡来文化と朝鮮通信使』の著者の仲尾宏先生が、駐大阪韓国総領事表彰を受けられました。

朝鮮通信使に関する記録のユネスコ「世界の記憶」登録に向けた活動など日韓の友好構築に貢献した功績がたたえられました。

年末年始休業のお知らせ

2020年12月26日(土)~2021年1月7日(木)は休業いたします。

ご迷惑をおかけしますがどうぞよろしくお願いいたします。

映画「評論家」不満

重政隆文著(大阪芸術大学芸術学部教授)

定価:本体価格1,800円+税

2020年12月25日発行

著者は大学教授にして、映画館主義者あるいは映画館原理主義という立場から映画評論を行い、現在も映画館で鑑賞した作品のみを映画会社のプロモーションとは無関係に評論している。もちろん、その鑑賞数は限界があるとはいえ、常人にはまねのできない頻度となっている。それだけにその映画鑑賞数と経験によって、さらには徹底して集めた映画評論本を読破したうえで、映画評論を職業としている人々の評論を一刀両断にしている。ある時は完膚なきまでに映画館主義を掲げる映画評論家の欺瞞を明らかにし、そして本当に映画(映画館鑑賞)を愛する評論家には称賛を惜しみなく与えている。たしかに映画コンテンツが二次的メディアに拡大して、それが映画産業を支えていることは事実である。メディアで提供されようがコンテンツとして配信されようが、個人、あるいは家庭内でのモニター、スクリーンで鑑賞される状況になっており、もちろん、スマートフォンで移動中に鑑賞されることも市場を支える大きな一角であることはまちがいない。しかし、これからも映画館での鑑賞は廃れることはないであろうことは、コロナ禍とはいえ、大ヒットを飛ばした映画と同時にミニシアターで映画が常にかけられ、ファンに支えられているという事実である。真に映画産業を支えるために、今日から映画館主義を掲げることもいいのではないかと、この本は思わせてくれるのである。

2018年11月発刊『映画「評論家」未満』の姉妹書

◇目次紹介◇

まえがき

Ⅰ アカデミズム

(1)蓮實重彦 とりあえず総長以後 

(2)阿部和重 蓮實重彦は二人要らない 

(3)黒沢清 蓮實重彦の掌の上 

(4)菊池成孔 音楽家の権威主義と優しさ 

(5)中条省平  天才と凡人の間、あるいは前衛から後衛へ

(6)四方田犬彦 同じ穴のムジナ 

(7)加藤幹郎 映画学者の鑑 

(8)阿部嘉昭 「性」「的」念仏 

(9)藤井省三 映画は文学の扶養家族か 

(10)北野圭介 アカデミズムの落とし穴 

(11)狩野良規 威張るあらすじ

(12)宮台真司・宮崎哲弥 M2の土俵 

(13)春日太一 映画史研究家としての根拠 

Ⅱ ジャーナリズム

(1)石飛徳樹 新聞の映画批評

(2)沢木耕太郎 侮れない局外批評

(3)山根貞男 時評継続の存在価値

(4)町山智浩 解説と批評は違う 

(5)柳下毅一郎 映画館などなくてもいい? 

(6)宇多丸 ラジオ映画批評の可能性 

(7)川勝正幸 商業主義の呪縛

(8)十河進 生活に溶け込む映画 

(9)前田有一・柴尾英令 ブログ映画批評は誰のため 

(10)木全公彦 やはり野に置け、エロ映画 

(11)麻生香太郎 レポーターに求めるもの 

Ⅲ フェミニズム

(1)まつかわゆま 映画の見方の読み方 

(2)御園生涼子・睡蓮みどり  映画批評に「女性ならでは」はあるか 

(3)真魚八重子 アマからプロへの失速 

(4)高橋いさを・本谷有希子  劇作家映画論の片手間とおよび腰

(5)林瑞絵 フランスから映画批評を考える 

(6)北川れい子 誠実大量、媚びへつらいなし 

 Ⅳ DVDイズム

(1)石岡良治 教養が邪魔をする 

(2)貴田庄・梶村啓二 小津評価の反復とズレ 

(3)瀬川裕司・末延芳晴 DVD批評の行方

(4)宮尾大輔 非観客による観客論の説得力 

(5)ましこ・ひでのり・三浦哲哉 モニター上の空論

あとがき 

Horikawa AC Lab主催『みんなの本屋さん』に出店中

京都の堀川商店街の中にありますHorikawa AC Labさんで開催中の「みんなの本屋さん」に出店しています。ひとつの書棚をお借りして、弊社の書籍を数冊置いていただいております。10月1日から三ヶ月間のイベントです。お近くにお越しの際には是非お立ち寄りください。なお、平日は不定休となっておりますので、ご来店の際にはご確認ください。

著作権入門ノート「アートと法」―表現の自由・自主規制・キャラクター 第二版

小笠原正仁 著

定価:本体2500円+税

2020年10月1日発刊

本書はクリエーターのための著作権法入門書である。そして、芸術表現において表現の自由は生命線であるように、その問題についても解説した。もちろん、法律による保護などあろうがなかろうか、芸術は表現すべきものを表現し、人びとに感動とさらには精神的革命を与える。しかしながら、そのような文化的創造はつねに伝統的価値を破壊しながら進んできたわけで、既存の価値観がそこでは常に立ちはだかっていた。それを国家的抑圧から解放したのが、表現の自由という人権である。これこそが近代を作ってきたと言っても過言ではない。この権利を日本的に、ガラパゴス化したのが自主規制である。本書はその特異性と、問題点を明らかにしている。法改定にも対応。

目次

はじめに〈新訂版の序〉
1  法と社会の一コマ
2  著作権法の構成――知的財産権法との関係
3  著作物
4  著作物いろいろ――著作物の例示
 COLUMN サウンドロゴ
5  キャラクター
 COLUMN 差し止めと損害賠償
6  著作権と商標法
 COLUMN 商標登録された商品
7  二次的著作物・編集著作物・データベースの著作物
8  著作者
9  著作者人格権・みなし侵害
10 著作財産権
11 著作権の制限
 COLUMN 違法ダウンロード厳罰化

12 保護期間
13 著作隣接権
14 著作権と図書館サービス
15 表現の自由と規制
 COLUMN イエロー・ジャーナリズム――ピュリッツァーとハースト
 COLUMN 親告罪
 COLUMN 罰則
16 自主規制
17 放送の表現の自由と自主規制
 COLUMN 罪刑法定主義と法治主義について
18 著作権Q&A

おわりに

〔付録〕 著作権法(抄)
著作権関連団体・機関一覧

夏季休暇のお知らせ

2020年8月8日(土)~16日(日)までは夏季休暇とさせていただきます。

ご迷惑をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

人権ブックレット21号 女人禁制――伝統と信仰

一般社団法人和歌山人権研究所 編

2020年7月14日発刊

本体価格:800円+税

現代においても女人禁制の課題は残されている。いまだに女人禁制の制度が残されているのが大相撲と宗教的聖域(大峯山等)である。本書は、宗教的に女人禁制の地であった高野山の女人禁制の歴史と、大相撲における実態を論じたものである。
歴史的に日本文化が男尊女卑であったと思われている節があるが、女性の相続権や所有権などからは女性が排除されていたとは言えず、前近代において姉家督やまたは離婚手続きなどで、女性の権利が認められていたことが証明されている。
父権制、母権制の区別でいうなら、両権制とも指摘されている。その点については、よく言われるように権利能力において制限を加えられたのは明治民法からと言われている。近代化のなかで女性の権利の低下が認められるのである。
本書では、前近代の女人禁制のあり方を高野山文書群の一つである「金剛峯寺日並記」から分析し、さらには、廃仏毀釈の嵐吹き荒れる近代化のなかで高野山真言宗の宗教的アイデンティティを女人禁制との関係で示唆を与えるもの。そして宗教的文化の一つとしての土俵からの女性排除を主張する大相撲のあり方を詳細な資料で論ずるものである。
女人禁制を近代的人権から考えるのは当然であるが、その思想的な位置づけを今一度じっくりと考えることが人権文化を日本に定着させるためにも必要である。

・・・目次紹介・・・

「金剛峯寺日並記」にみる女人禁制    矢野治世美 熊本学園大学准教授

はじめに
1 女人禁制の方法
  棟杭・制札の設置/大坂町中に建てられた制札/七口での女性の差し止め
2 高野山の女人堂
 女人結界と女人堂/道中日記に記された女人堂/旅は安全?/遠忌と女性参詣者/女人堂の機能
3 結界を越えた女性たち
  前代未聞の事件/是非共大師様へ参詣いたし候
おわりに

高野山の女人禁制について     木下浩良 高野山大学総合学術機構課長

はじめに
1 空海による高野山の結界
2 高野山は異界の山中他界
3 空海による結界の範囲の縮小
4 丹生明神と高野山の僧侶
5 高野山の禁忌〈タブー〉と恐れ
6「恐れ」を超える大師信仰
7 女人禁制全廃までの経緯
おわりに

大相撲の女人禁制・考          藤里 晃 和歌山人権研究所 研究員

はじめに
1 過去にも土俵の「女人禁制」に関わるできごとがあった
①1978年、「わんぱく相撲東京場所」で準優勝の小学5年生の女の子が蔵前国技館(当時)での「東 京一」を競う大会に出場できなかった/②1990年、森山眞弓官房長官、内閣総理大臣杯の授与をと の意向に対して「待った」/③1991年、「わんぱく相撲」徳島県美馬郡予選で、小学5年生の女の子
が優勝したのに、国技館の土俵に上がれなかった/④太田房江大阪府知事が、知事賞授与で土俵に上が りたいと提起するが、日本相撲協会は拒否/⑤内館牧子氏の「女人禁制」維持発言とそれに対する反論 /⑥女性客が土俵に/⑦断髪式
2 疑問だらけの日本相撲協会理事長談話
①大相撲舞鶴場所で、救命中の女性に対して「女性の方はお降りください」とアナウンス/②中川智子宝塚市長、「土俵の上からあいさつできない。これはつらいです。悔しいです」とあいさつ/③元女相撲の大関若緑が巡業の土俵に上がって、あいさつをした/④静岡場所開催の4日前に「ちびっこ相撲」に女の子の参加はダメという連絡(V)/⑤国が「国技大相撲」と決めたのか(e)/⑥「伝統」は変えることができないのか(O)/⑦「意識調査」の実施についてどうなっているのか
3 大相撲の「女人禁制」
①相撲の歴史/②土俵の歴史/③明治時代/④土俵の「女人禁制」はいつからか、はっきりしたことはわからない/⑤女相撲/⑥「わんぱく相撲」、女子の全国大会が開催される/⑦宝塚歌劇団と歌舞伎など
4「女性差別」を認めようとしない日本相撲協会は、憲法、法令違反
①土俵の「女人禁制は女性差別だ」ということについて(K)/②相撲協会に対する税の優遇措置をやめること/③国会議員の「日本相撲協会の女性を土俵に上げないことは、女性差別ではないのか」という指摘に、政府関係者の「相撲協会が自主的に判断すべきもの」という答弁には、納得がいかない
おわりに

あとがき               一般社団法人和歌山人権研究所事務局

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小田康徳先生の紹介記事掲載

『旧真田山陸軍墓地、墓標との対話』編著者の小田康徳先生の紹介記事が新聞に掲載されました。

大阪日日新聞(3月14日)、京都新聞(3月14日)、信濃毎日新聞(3月14日)、神戸新聞(3月17日)

小田康徳先生のご講演

2月22日(土)豊中の原田しろあと館にて『旧真田山陸軍墓地、墓標との対話』編著者の小田康徳先生が講演されます。

http://4415.info/custom1.html

年末年始休業のお知らせ

2019年12月27日から2020年1月6日までは休業させていただきます。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

旧真田山陸軍墓地、墓標との対話

小田康徳編著

NPO法人旧真田陸軍墓地とその保存を考える会

2019年11月30日発刊 

定価:本体価格1,800円+税

陸軍関係者5000基以上の墓碑と8000人分以上の分骨を納めた納骨堂を有する、広大な旧真田山陸軍墓地が大阪市内にある。戦死者だけに限らない、その埋葬者の墓標調査から、明治以来の陸軍・戦争の真実を探る。著者たちは〈NPO法人旧真田山陸軍墓地とその保存を考える会〉の会員であり、理事・監事をはじめ墓地案内のボランティアの経験を有している。

****目次紹介****

まえがき 小田康徳
第一部 陸軍墓地の通史をまとめる 小田康徳
はじめに
1 「軍隊と死」――陸軍墓地の始まり
明治維新と陸軍の創出/陸軍はなぜ兵隊埋葬地を必要としたか /平時における兵卒の死を考える
2内戦と死者の埋葬――鎮台の役割と陸軍墓地
「反乱」「暴動」の続発と鎮台兵/西南戦争における大阪鎮台の位置/相次ぐ戦病没者と真田山陸軍墓地
3対外戦争の常態化と陸軍墓地
日清戦争と「軍人名誉」としての墓碑建立の始まり/ 日清戦争戦病没の実態と台湾領有戦争への派遣 / 貴重な歴史遺産――軍役夫・清国軍俘虜等の墓碑/日露戦争――急増する死者/ 全体のなかに埋没する個々の戦没者――合葬墓碑の出現
4遺骨の帰らぬ戦争へ
日露戦後の真田山陸軍墓地 /日中戦争の激化と「合葬墓塔」の計画/忠霊塔・忠霊堂・納骨堂の建造/ 納骨堂の調査から――「帝国」の崩壊と外地の遺骨
5陸軍墓地の歴史をふりかえって
終戦と陸軍墓地の戦後/戦没者の招魂と慰霊について

第二部 さまざまな死者との出会い
第1章 平時の死没者
下田織之助、最初の埋葬者にして謎の死――兵隊埋葬地はいかにしてできたのか 堀田暁生
一 最も古く葬られた人物   二 その足跡を考える  三 なぜ兵隊埋葬地は開かれたのか  四 予想される内戦への備えだった?  五 墓碑の謎
生兵の溺死 横山篤夫
一 真田山陸軍墓地に残る生兵の墓碑  二 溺死した生兵   三 他の陸軍墓地の溺死生兵調査の必要性
中山寺で死亡した大津聯隊の生兵、北川米次郎 今西聡子
一  入隊から半年たらずの死  二 入隊するまでの米次郎  三 入隊した米次郎  四 大阪鎮台の転地療養所と米次郎  
脚気と陸軍 今西聡子
一 脚気の「流行」について  二 脚気と転地療養  三  幻の陸軍病院附属転地養生所
コラム❖生兵の発病率と死亡率  今西聡子
三〇年間神戸に眠っていた遺骨 今西聡子
一 大倉山に埋葬されていた八人  二 彼らはいつどこで死亡したのか?  三  療養所と埋葬地はどこにあったのか?  四 なぜ真田山陸軍墓地に改葬することになったのか?  五 遺骨はどのように改葬されたのか? 
第2章 西南戦争と大阪での死没軍人たち
京都府出身西南戦争戦死者と真田山墓碑――地域史史料としての真田山墓碑群 橘 尚彦
一  岡井捨松の二つの墓  二 京都府出身西南戦争戦死者の文書史料   三 京都府出身西南戦争戦死者の墓碑銘  四 文書史料と墓碑銘からわかること  五 岡井捨松墓碑の語るもの  六 自治体史にみる西南戦争戦死者 七 地域史史料としての真田山墓碑銘
屯田兵はいかに葬られたか――村田政吉と東條敬次郎  冨井恭二
一  総力戦だった西南戦争  二 西南戦争に志願した戊辰戦争の敗者   三 死亡診断書からわかる墓碑の誤記  四 混乱の世を象徴する墓碑銘
陸軍墓地に眠る二人の水兵――公文書から見る兵士の諸相  藤田裕介
一 なぜ水平の墓が陸軍墓地に?  二 大坂陸軍臨時病院と水兵  三 水兵の病死と真田山陸軍墓地への埋葬  四 明らかになった成果と課題
溝部素史大尉の生涯と墓碑の謎――溝部素史資料の発見  堀田暁生
一  一本の電話   二 西南戦争で戦死――墓碑の謎  三 最後の手紙
元東京鎮台輜重輸卒木村吉之助の墓碑 飯沼雅行
一   不思議な肩書き  二  戦死した弟の墓碑が陸軍墓地にない  三 墓碑の「再築」  四  新たな謎
第3章 日清・日露の戦争から大正期の対外戦争まで
日清戦争時の清国人俘虜の墓碑から見えてくること 塚﨑昌之
一 知られていない清国人俘虜  二 最初の清国人俘虜と国際法  三 清国人俘虜の多くを都会に置く方針に   
四  「臭い」清国人俘虜の日本到着  五 「見世物」とされた清国人俘虜  六 清国人俘虜の死亡者と墓碑  七 清国人俘虜の帰国
故軍役人夫南方留吉の墓碑 堀田暁生
一  墓地の入り口にたたずむ墓碑  二  日清戦争に従軍した民間人  三 墓碑からわかる軍役夫のあれこれ
『朝日新聞』に見る日露戦争――「戦死者家族訪問記」  中下秀夫
一  小説のような「語り」を駆使した遺族訪問記  二  「出征に際し妻と離縁」は美談か?  
三  ナショナリズムと結託したときの新聞の危うさ
南山の戦い、村田虎吉一等卒の戦死と埋葬――日露戦死者の個人墓碑と「満州」の忠霊塔 横山篤夫
一  日露戦争の南山の戦いで戦死した若者の墓   二 南山の戦いで戦死したときの様子  三 村田一等卒の遺体・遺骨はどう扱われたか  四 大連忠霊塔  
近藤元粋撰の宮津隆成墓碑銘――其れ亦た以て瞑す可きかな 小田直寿
一  大阪の高名な漢学者、近藤元粋が撰んだ墓碑銘  二 墓碑銘と宮津隆成の人物像   三 近藤元粋から見た宮津隆成と日露戦争  四 碑文撰述における文章表現  五 墓碑銘研究の可能性
日露戦争合葬墓碑の前に立つ石灯籠と廃兵前田梅吉 今西聡子
一 戦死者合葬墓碑と石灯籠   二 前田梅吉について  三 廃兵による廃兵支援と廃兵前田梅吉  四 陸軍墓地の石灯籠
コラム❖癈兵について 今西聡子
第一次世界大戦におけるドイツ兵俘虜 吉岡武・堀田暁生
一 俘虜となって大阪へ送られた経緯  二 二人のドイツ人俘虜のこと  三 日本各地にあった俘虜収容所  四 墓碑から削られた「俘虜」の文字 五 戦前の交流、戦後の弔いのありよう  六 俘虜収容所をめぐる研究の現状
第4章 十五年戦争と関わった人々
槍で突かれて戦死した四至本直次郎一等兵 横山篤夫
一  死亡事由の謎   二 満州事変に抗した中国民衆  三 新聞記事が描写する最期の姿  四 家族への最後の便りには辞世らしい言葉が  
納骨堂発見アルバムにみる、味岡義一少佐の一生 奥田裕樹
一 幼少期から歩兵第六聯隊勤務まで  二 歩兵一八聯隊転任と青島・済南への出征 三 独立守備隊中隊長への補任と満州事変  四 吉林省警備司令部教官から黒竜江省警備司令部顧問へ  五 義一の死と葬儀  六 義一のアルバムが問うもの
三九人の遺骨が語る日中戦争初期の日本軍の敗北 横山篤夫
一 将兵三九人が一日で戦死  二 日本の新聞が報じなかった事実  三 中国側の記述から事実を探る  四 残された映像が語る当時の「空気」
忠霊塔建設運動と真田山「仮忠霊堂」――「仰ぎ見る」塔から木造納骨堂へ 橘尚彦
一 忠霊顕彰会による忠霊塔建設運動  二 陸軍墓地としての忠霊塔(合葬墓塔)  三 忠霊塔としての納骨堂  四 大阪府仏教会による忠霊塔計画  五 陸軍墓地の最 終形態
村の遺族会によって建立された陸海軍将兵の墓碑  横山篤夫
一  野田村遺族会を訪ねたが、建立の事情は不明  二 村民の帰属意識を保つために墓碑建立か  三 戦後の複雑な遺族感情を反映  四 墓碑の建つ風景からわかること 
第5章 真田山陸軍墓地を考える
現景観の原点、墓地南半部の譲渡と大幅改葬の実施 堀田暁生
一  墓域の変遷  二 改葬作業  三 移転方法
墓碑の形 堀田暁生
一  形の変遷  二 現在みられる様々な形状  三 墓碑の形状の理由は?   四 「埋葬法則」や「通達」では解明できない形状の謎
コラム❖墓が二つある? 堀田暁生
真田山陸軍墓地と関わった日々 吉岡 武
一  戦時から戦後へ――子どもの目に映った陸軍墓地  二 墓地活動への関わり  三 被葬者への責務を考える  余録 墓地案内をして
高校教育と陸軍墓地と私   岡田祥子
一 陸軍墓地と私  二 生徒の感想より  三 今考えること
新しい「供養」を考える――『イン・リポーズ』によるオーストラリアの日本人墓地での例を参考に 岡田蕗子
一  戦死とはなにか、どのように弔うべきか  二 文化を織り合わせ、「共に弔う」試み  三  権威的な国史ではない、動態的な「記憶の共同体」の構築を
台風二一号の惨禍と保存への道 堀田暁生・小田康徳
一  激烈だった台風二一号  二 被害状況の概要  三 墓地保存への道
あとがき 小田康徳

付録 旧真田山陸軍墓地を知るための基礎資料
1 旧真田山陸軍墓地の俯瞰図 2 年次別に見た個人墓碑の建立一覧 3 戦時期・平時期別に見た個人墓碑建立状況 4 納骨堂、被葬者遺骨の年次別推移と遺骨の有無 5 納骨堂、位牌を有する被葬者のうち遺骨の有無の年次別推移 6 納骨堂、戦没地別被葬者数の推移 7日本国内の主な陸海軍墓地 8 関係年表
編者・著者紹介

『京都の渡来文化と朝鮮通信使』の書評掲載

8月25日付の京都民報紙に『京都の渡来文化と朝鮮通信使』の書評を掲載していただきました。

夏季休業のお知らせ

2019年8月10~19日は休業いたします。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

一般社団法人和歌山人権研究所 紀要第8号

一般社団法人和歌山人権研究所 編

定価:本体価格1000円+税

2019年8月30日発刊

  

  

西光万吉「和栄運動」研究の展望と課題  小田直寿 

一向一揆起源論と現代の部落差別についての一考察  小笠原正仁

【本の紹介】朝治武『水平社論争の群像』 渡辺俊雄

【書評】矢野治世美『和歌山の差別と民衆――女性・部落・ハンセン病問題』  西川哲矢

京都の渡来文化と朝鮮通信使

7月20日(土)の毎日新聞 〈京都版〉にて、『京都の渡来文化と朝鮮通信使』の紹介をしていただきました。

『京都の渡来文化と朝鮮通信使』

仲尾宏 著

本体価格:1,800円+税

2019年6月15日発刊

京都の日本的な文化の基層にある、朝鮮・中国・西欧の文化を掘り起して歴史を見直し、国際都市京都の視点から東アジアの文明に連なる日本の姿を描き出す。朝鮮通信使「ユネスコ世界記憶遺産」登録記念出版。

まえがき
プロローグ 祇園祭――インターナショナルな祝祭
祇園社と八坂のカミ/スサノオと牛頭天王/京の町衆の真夏の祝祭/「動く美術館」の国籍
Ⅰ.中国・朝鮮文化の受容と発展〈古代~中世〉
1 風土記の世界と渡来人〈飛鳥時代〉
賀茂氏と秦氏の伝承/「帰化人」よ、さようなら/秦氏の本拠地・太秦/ 広隆寺と弥勒菩薩像/ 山背は渡来人の沃野
2 平安京をつくった人びと〈奈良~平安時代初〉
平安楽土・万年春の実相/高野新笠と長岡遷都/再遷都と桓武のブレーンたち/
長安の都と平安京
3 王城鎮護の新思想―― 天台と真言〈平安時代前期〉
天台・比叡山の二つの顔/真言密教の異国ぶり/三国伝来の釈迦瑞像/
4 平安文化と大陸文化〈平安時代中・後期〉
菅原道真の虚像と実像/外交上必要だった漢字/紫式部の中国古典教養/ 枕草子と和漢朗詠集
5 日宋貿易と五山文化〈平安時代末期~鎌倉時代〉
平氏政権の日宋貿易/栄西と天下第一の茶/渡来僧一山一寧とその弟子たち
6 室町文化と東アジア世界〈南北朝・室町時代〉
金閣の美と日本国王義満/朝鮮王朝との通交・通商/唐物荘厳の世界
Ⅱ.西洋との出会い・朝鮮との新たな交流〈近世~近代〉
1 南蛮人と京都〈安土桃山時代〉
鉄砲と神の文化大革命/宣教師の見た京都/慶長年間の南蛮寺復興/ 庶民に及んだ西洋文化
2 海外雄飛―― 角倉了以・素庵の仕事〈安土桃山時代〉
角倉船と東南アジア/中国に倣った河川開削/茶屋四郎次郎家の場合
3 秀吉の朝鮮侵略の悲惨と遺産〈安土桃山時代〉
「耳塚」残酷物語と儒者姜沆/藤原惺窩と朝鮮朱子学/朝鮮被擄人の伝えた技術/戦乱の遺品いろいろ/楽焼と一閑張
4 善隣友好の朝鮮通信使〈江戸時代〉
復交の舞台・京都/伏見城での聘礼挙行/対馬以酊庵輪番像と京都五山僧
5 泰平の時代の海外と京都〈江戸時代〉
幻の「鎖国」体制/山門の内は明代・中国/ 西陣織と朝鮮問屋/ 琉球使者の京都入り/オランダ使節と殿上象
6 文明開化の京都〈明治時代〉
「御一新」と明治天皇/取り残された京都の課題/山本覚馬とその思想
エピローグ 東アジアと京都―― 多文化共生をめざして
内外文化集積の地/日本の文化ターミナル/単一民族史観の克服
あとがき

謹賀新年

あたらしき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて たのしきをつめ
古今和歌集 読み人知らず

昨年は、関西も台風・地震と昨今の日本列島を襲う災害に無縁でないと思い知らされる年でした。歴史を振り返れば、このようなことを積み重ねて、我々は文化と文明を築き、継承してまいりました。喜びも悲しみも受け継ぐなかにこそ、「千歳をかねて たのしきをつめ」という思いが生きるのではと考えます。
本年も、相変わりませず、よろしくおねがいします。
二〇一九年 元旦

社員一同

年末年始休業のお知らせ

2018年12月28日(金)~2019年1月6日(日)は休業させていただきます。

ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

11月16日・18日毎日新聞朝刊サンヤツにて『映画「評論家」未満』の広告掲載!!!

毎日新聞に、『映画「評論家」未満』の広告を掲載いたします。

11月16日朝刊 関西版以外、 11月18日朝刊 関西版

よろしくお願いいたします。

 

 

映画「評論家」未満

重政隆文著(大阪芸術大学芸術学部教授)

定価:本体価格1,800円+税

2018年11月10日発行

映画批評を専門とはしていない人(作家・学者・ジャーナリスト・漫画家・映画監督・美術家・タレントなど)が2000年以降に出版した映画評論本(72著者・104冊)を、映画批評史研究専門の大学教授が論じる。

****目次紹介****
まえがき
A.作家・評論家Ⅰ
(1)小林信彦
『昭和のまぼろし』『昭和が遠くなって』『映画×東京 とっておき雑学ノート』『B型の品格』『森繁の長い影』『気になる日本語』『非常事態の中の愉しみ』『映画の話が多くなって』『「あまちゃん」はなぜ面白かったか?』『女優で観るか、監督を追うか』『古い洋画と新しい邦画と』『わがクラシック・スターたち』
(2)金井美恵子
『「競争相手は馬鹿ばかり」の世界へようこそ』『目白雑録』『目白雑録2』『楽しみと日々』『目白雑録3』『日々のあれこれ 目白雑録4』『目白雑録5 小さいもの、大きいこと』『新・目白雑録』
(3)中野翠
『あのころ、早稲田で』『ぺこぺこ映画日記1993 -2002』『まんざら』『おみごと手帖』『ごきげんタコ手帖』『金魚のひらひら』『みずいろメガネ』『東京プカプカ』『晴れた日に永遠が…』『この素晴らしき世界!?』『ぐうたら上等』『TOKYO海月通信』
B.作家・評論家Ⅱ
(1)井上ひさし
『映画をたずねて 井上ひさし対談集』
(2)長部日出雄
『邦画の昭和史』
(3)塩野七生
『ローマで語る』
(4)原田宗典
『私は好奇心の強いゴッドファーザー』
(5)黒田信一
『まんぷく映画館』
(6)福井晴敏
『テアトル東向島アカデミー賞』
(7)松久淳
『愛の教訓』
(8)長嶋有
『観なかった映画』
(9)伊藤計劃
『伊藤計劃映画時評集1』『伊藤計劃映画時評集2』
C.評論家・研究者
(1)上野千鶴子
『映画から見える世界』
(2)西部邁・佐高信
『西部邁と佐高信の思想的映画論』
(3)粉川哲夫
『映画のウトピア』
(4)副島隆彦
『アメリカ帝国の滅亡を予言する』『副島隆彦の政治映画評論 ヨーロッパ映画編』
(5)内田樹
『うほほいシネクラブ』
D.学者・研究者
(1)越川芳明
『壁の向こうの天使たち』
(2)吉田眸
『ドアの映画史』
(3)小長谷有紀・鈴木紀・旦匡子
『ワールドシネマ・スタディーズ』
(4)栗原好郎
『シネマ・クリティック』
(5)櫻田忠衛
『昔、聚楽座があった』
E.ジャーナリスト・ライター
(1)立花珠樹
『ニューヨーク人生横丁』『「あのころ」の日本映画がみたい!』『あのころ、映画があった』『女と男の名作シネマ』
(2)玉木研二
『その時、名画があった』
(3)松本侑壬子
『銀幕のハーストリー』
(4)小宮山量平
『映画は《私の大学》でした』
(5)塩山芳明
『東京の暴れん坊 俺が踏みつけた映画・古本・エロ漫画』
(6)吉本由美
『するめ映画館』
(7)沢辺有司
『ワケありな映画』
F.劇作家
(1)つかこうへい
『つか版 誰がために鐘は鳴る』
(2)河原雅彦
『スターおすすめられシネマ』
(3)高橋いさを
『オリジナル・パラダイス』
G.漫画家・漫画評論家
(1)みうらじゅん
『みうらじゅんの映画批評大全1998 -2005』『みうらじゅんの映画批評大全2006 -2009』『みうらじゅんの映画ってそこがいいんじゃない!』
(2)奥浩哉
『GANTZなSF映画論』
(3)荒木飛呂彦
『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』
(4)弘兼憲史
『弘兼憲史の人生を学べる名画座』
(5)やまだないと
『ハルヒマヒネマ』
(6)大木えりか
『21世紀萌え映画読本』
H.映画関係者
(1)井筒和幸
『サルに教える映画の話』
(2)押井守
『勝つために戦え! 監督篇』『勝つために戦え! 監督ゼッキョー篇』『実写映画 オトナの事情』
(3)リリー・フランキー
『日本のみなさんさようなら』
(4)沼田やすひろ
『「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方』
(5)宮越澄
『監督と俳優』
I.テレビタレント
(1)江頭2:50
『江頭2:50の「エイガ批評宣言」』
(2)前田敦子
『前田敦子の映画手帖』
(3)松本人志
『シネマ坊主3』
(4)千秋
『映画ブ、作りました。』
(5)LiLiCo
『映画的生活』
J.放送関係者
(1)佐々木恭子
『戀戀シネマ』
(2)浜村淳
『さてみなさん聞いて下さい 浜村淳ラジオ話芸 「ありがとう」そして「バチョン」』『浜村淳の浜村映画史』
(3)土屋晴乃
『ようこそ 土屋名画座へ』
(4)境真良
『テレビ進化論』
(5)吉川圭三
『ヒット番組に必要なことはすべて映画に学んだ』
(6)立川談志
『観なきゃよかった』
(7)立川志らく
『シネマ落語』
(8)佐々木昭一郎
『増補新版 創るということ』『ミンヨン 倍音の法則 シナリオ+ドキュメント』
K.美術関係者
(1)安西水丸
『夢の名画座で逢いましょう』
(2)大野左紀子
『あなたたちはあちら、わたしはこちら』
(3)森村泰昌・平野啓一郎
『クロスボーダーレビュー2009-2013』
(4)和田誠
『シネマ今昔問答』『シネマ今昔問答・望郷篇』『ぼくが映画ファンだった頃』
(5)石川三千花
『石川三千花の勝手にシネマ・フィーバー』
L.特殊な本業、その他
(1)落合博満
『戦士の休息』
(2)加納とも枝
『シネマの快楽に酔いしれて』
(3)釈徹宗・秋田光彦
『仏教シネマ』
(4)中村恵二・有地智枝子
『最新映画産業の動向とカラクリがよ~くわかる本』
(5)WOWOW「映画の間取り」編集部
『映画の間取り』
あとがき
著者名索引
書名索引

念仏と解放 第12号

同朋運動を続ける会編

定価:本体価格 500円+税

2018年10月25日発刊

西本願寺教団の部落解放運動をはじめとする反差別運動である「同朋運動を続ける会」の年報。教団が抱える矛盾や問題点を各教区の現場からの報告などを共有するための最良の書。

☆目次紹介☆
同朋運動七〇周年にむけて  嶋津弘隆
同朋運動七〇周年にむけて ――「差別・被差別からの解放」と「御同朋の教学の構築」  藤満智徳
九州・沖縄同朋運動推進協議会の現在  齊藤 真
編集後記

紀要「大阪の歴史」で『大阪断刑録』が紹介されました。

大阪市史編纂所の紀要「大阪の歴史」最新号の書評で取り上げていただきました。

10月14日毎日新聞朝刊サンヤツにて『中天の半月』掲載

阿部健著『中天の半月』のサンヤツ広告が10月14日、毎日新聞朝刊(全国版)にて掲載されます。

関西は10月16日です。

皆様どうぞご注文よろしくお願いします。

中天の半月

在庫僅少

阿部健著

定価:本体価格2,000円+税

2018年10月15日発刊

幕末・明治・大正・昭和という激動の時代において、開拓期の北海道から日本支配時代の朝鮮を舞台に、力強く生き抜いた一族の物語。日本人男性と結ばれた朝鮮人女性の生き方に感銘を受けずにはいられない。

目次紹介

まえがき
第1章 二人の政治犯
(1)高橋竹之介 /(2)転 進 /(3)大橋一蔵
第2章 北海道監獄
(1)看守白石 /(2)家族の日常 /(3)大井上典獄
第3章 朝鮮に渡る
(1)産婆学校 /(2)朝鮮通信機関 /(3)元次郎と平壌
第4章 金碩玄(キムソッキョン)
(1)出会い /(2)事件の後 /(3)出 産
第5章 独立運動前後
(1)自 立 /(2)平壌慈恵病院 /(3)闘いの後
第6章 戦間期
(1)恋する碩玄 /(2)夢見る秀治 /(3)疑惑の喜林
第7章 皇民化
(1)秀治の死 /(2)京城の秀実 /(3)平壌の羅家
第8章 親日派(チニルパ)
(1)収穫祭 /(2) 李光洙/(3)別 離
第9章 秀実の戦場
(1)実父母 /(2)病院での邂逅 /(3)脱走兵
第10章 敗戦と光復
(1)中国の抑留地 /(2)定州と古邑/(3)平壌と京城
第11章 故 郷
(1)特攻帰還 /(2)避難民と引揚者 /(3)秀実の決意
終 章 夜明けのうた
あとがき
付属資料
主な登場人物 / 略年譜 / 参考文献 / 朝鮮全図

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