八木先生の京都覚え書きー洛中・洛外 いま・むかし

八木晃介著(花園大学名誉教授)

定価:本体価格2,200円+税

2022年3月10日発刊

京都は「花の田舎」か、それとも? 社会学者の問題意識によってその深奥まで浮き彫りにされる京都の現実が追求される。毎日新聞連載コラム堂々の完結。洛中・洛外のさまざまな歴史やイマドキの事情がじっくり読める一冊。あたらしい「京都の歩き方」です。

目次紹介

まえがき
第1章 京都で琉球沖縄を学ぶ
1 沖縄との距離――非戦思い、絆高める「塔」 
2 経ケ岬の米軍レーダー基地――住民の心身・文化踏みにじる 
3 念仏踊りとエイサー踊り――京都と沖縄の懸け橋、檀王法林寺 
4 「すべての米軍基地はいらない」――沖縄とつながり強め 
5 〝学知〟による植民地支配――琉球人遺骨返還問題 
6 琉球沖縄化する京都――経ケ岬の米軍基地と住民 
7 経ケ岬も琉球沖縄化――在日米軍とコロナ感染 
第2章 戦争と京都との距離
1 「明治150年」の違和感――戦前の歴史美化につながらぬか 
2 今も生きる?「松陰」思想――京都御苑・蛤御門で考える 
3 山本宣治と治安維持法――「共謀罪」法を認めない 
4 強制疎開――被害と加害の思想が交錯 
5 〝軍〟の本質は〝暴走〟――原爆投下、予定地の京 
6 戦争体験の思想化――舞鶴引揚記念館と浮島丸殉難の碑 
7 戦争の遺跡と博物館――被害と加害の声を聴く 
8 京都における朝鮮戦争――「京大生小野君の占領期獄中日記」 
9 京都と東アジア情勢――経ケ岬米軍基地に注目を 
10 周恩来詩碑と日中友好――尖閣棚上げの〝模糊〟に一点の光 
11 731部隊と遺骨問題――医学・科学の戦争責任は 
12 優生思想の差別性問う――京都ALS女性の死亡 
第3章 京都における差別の歴史と現実
1 「鴨の河原」のエネルギー――境界の「異風」が生み出す文化 
2 基層文化を担った声聞師――陰陽師と差別問題 
3 龍安寺石庭の謎――中世賤民の芸術を想像 
4 「鬼」から差別を考える――大江山の酒呑童子 
5 コロナ禍と差別問題――伝染は「触穢」なのか 
6 「われら山水河原者の末裔なり」――柳原銀行記念資料館開設20年 
7 同対審答申から55年――京都発、行政闘争の光陰 
8 米騒動と京都――水平社創立の歴史的必然性 
9 「水平社宣言」95年――人の世に熱あれ、人間に光あれ 
10 部落差別の本質を考える場――朝田善之助記念館が完成 
11 空洞化する被差別部落――楽只小閉校に思う 
12 「竹田の子守唄」その盛衰――被差別部落、闘いの歌 
13 文字の奪還から感性回復――識字運動と人間解放 
14 野宿の人々との連帯求めて――きょうと夜まわりの会 
第4章 東アジアの中の京都、そして在日コリアン
1 東九条マダン――多文化の共生、交流求め 
2 コリアンと部落民衆の「再会」――東九条マダンの挑戦 
3 大変動の中のウトロ――在日の生きざま〝正しい歴史認識〟を 
4 朝鮮学校のヘイト襲撃10年――市民の対抗活動に期待 
5 ヘイトスピーチと京都――法的規制と市民運動が重要 
6 在日コリアンの「恨」――「聴く」は重荷の分かち合い 
7 コリアン文化の粋、伝え――高麗美術館、創設30周年
8 伝統産業支えた在日朝鮮人――友禅染と西陣織 
9 「耳塚」のおぞましさ――秀吉を利用した明治政府 
10 朝鮮通信使――友好と親善 互いに真実をもって交わる 
11 「京都らしさ」の虚像と実像――祇園祭も平安京も渡来系
第5章 京都で反原発を考える
1 「3・11」から6年――続く自主避難者の〝三重苦〟
2 原発賠償京都訴訟判決を前に――尊重すべき「逃げる」権利 
3 京都で「家族型保養」軌道に――福島原発事故から9年 
4 幼稚園への保養留学――脱原発、視野に入れながら 
5 京都も「被害地元」に――福島・原発事故8年
6 〝新たな安全神話〟か――京都府の放射性物質拡散予測 
7 小水力発電――脱原発・脱化石燃料の文化へ 
8 資源の自然循環を実践――南丹のバイオガス発電 
9 〝キンカン行動〟400回超す――脱原発社会の実現求め 
第6章 学びの街・京都の過去と現在
1 京都学連事件――治安維持法類似の〝共謀罪〟 
2 尹東柱生誕100年の現在――治安維持法と共謀罪法 
3 「貧乏物語」100年――波瀾万丈・河上肇の求道 
4 京大・滝川事件から85年――強権弾圧から規律管理に 
5 京大「タテカン問題」――都市景観と表現の自由考える 
6 京の「在野学」と町衆――伊藤仁斎と石田梅岩の場合 
7 新村出博士の旧邸――壮観、『広辞苑』づくりの現場 
8 「高校三原則」崩壊40年――〝15の春〟は泣かないか
9 戦争体験の継承――「伝記作成プロジェクト」に期待 
10 増える「子ども食堂」――地域共同体の交流拠点 
第7章 京都の宗教文化の現実性
1 「怨親平等」の宗教文化――平和の視点、死者と対話 
2 「造反有理」過去と現在――平将門と京都 
3 明智光秀と京都――謀反は歴史の進歩か反動か 
4 妙派の峰尾節堂師 百回忌――大逆事件から共謀罪法を思う 
5 「大本」教団の受難と栄光――祭政一致体制のおぞましさ 
6 いま、「大嘗祭」を考える――憲法や差別問題と関係 
7 大嘗祭への京都府の関与――政教分離求め監査請求 
8 小笠原博士とハンセン病――「隔離反対」支えた親鸞の教え 
9 洛北・岩倉の宗教・医療風土――精神保健福祉法改定案に疑問 
10 無所有・奉仕の共同体――「一燈園」思想は連綿と 
11 「縁」変革による反差別――親鸞『唯信鈔文意』770年 
12 現代〝丑の時参り〟の情念――安井金比羅宮に見る呪術と宗教
13 祇園祭、コロナで中止――神事と観光の狭間で
14 金閣寺炎上から70年――三島と水上を読み返す 
15 罪悪抱えた人間の闇問う――死刑制度と京の宗門 
16 社会的共通資本の宗教――諸宗派が矛盾なく共生
第8章 京都の文化と伝統産業
1 伝統踏まえた革新の行方――「丹後ちりめん」創業300年 
2 「木の文化」を守れ――北山丸太の危機 
3 錦ブランドの作り直し――「京の台所」再生のために 
4 「喫茶店」文化論――人間関係を映す〝時代の鏡〟 
5 なぜかパン好き京都人――京最古の「パン屋」100年 
6 市民による市民のための放送局――京都三条ラジオカフェ 
7 京響が〝還暦〟――市民の文化性向上に寄与 
8 京の古本屋事情――大学・寺院・伝統工芸と連動 
9 「京ことば」考――〝余所者〟への警戒心? 
10どもりながら生きる――「吃音者宣言」の精神、今も
11 京都人はケチなのか?――蓄財と散財の絶妙な「胸算用」 
第9章 京都は「花の田舎」か
1 『京都ぎらい』を読む――「差別論」としての京都論 
2 市美の命名権売却に違和感――立ち止まって、市民の意見を 
3 宿泊税を考える――京都は「花の田舎」なのか 
4 自衛隊への宛名シール提供――京都市は市民と対話を 
5 苦境・京のホテル事情――コロナ禍以前、政策の難点
6 京都とコロナ・パンデミック――不条理とのつきあい方 
7 社会問題としての京都――「あとがき」にかえて 

  • 判型 : 四六判
  • 頁数 : 360頁
  • ISBN : 978-4-907244-45-3

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