身分差別の制度化

牧 英正 著

2014年7月30日発刊

定価: 8,000円+税

江戸幕府の支配では、まずは前例が尊重され、争いがあって訴訟となり裁許があると判決が積み重ねられて制度が構築された。
延享年間(1744~48年)に、非人頭車善七らは 穢多頭淺草弾左衛門以下を手下にしたいと願い出た。しかし評定所はこの訴えを退け、逆に弾左衛門の非人頭以下に対する支配を確認し、願い出た関係者を死罪とした。この年から非人たちは弾左衛門に、規律を守ることを誓う「年証文」を提出することになった。こうして江戸幕府のもとでは弾左衛門右衛門の支配が確立した。著者は、この訴訟を日本の部落史のエポックであったと考える。

幕府の大名たちへの権力が相対的に強まった江戸中期以降、大名たちは、領内の穢多・非人に対する扱いについても伺をたて、幕府の機関はこれに答えた。これらの問答は書写されて流布した。こうして幕府の賤民制度は全国化する。

本書は、著者の法制史研究の立場から、江戸時代の身分差別制度形成の過程解明に正面から挑んだ所産である。

目次紹介

まえがき

第一章 近世被差別身分制度前の状況について
はじめに
一 触穢
二 汚穢の処理
三 弾左衛門の登場
むすび

第二章 江戸幕府による差別の制度化
はじめに
一 江戸初期の穢多と非人
二 評定所の裁許――貞享年間の車善七・浅草弾左衛門争論
三 評定所の裁許――元禄の車善七と弾左衛門の争論
四 評定所の裁許――享保年間の車善七らと弾左衛門争論
五 非人にたいする管理の強化
六 非人手下
むすび

第三章 安永期以降における幕府の身分政策
はじめに
一 安永期前後の関係幕府法令
二 穢多非人にかんする判例の集積
1 穢多・非人の召致
2 御定書非人仕置
3 安永七年の触書
4 警察業務
5 二重支配
6 身分の変動
7 身分の詐称
8 人別・欠落
9 吟味と仕置
10 異なる身分間の傷害・殺人
11 盗犯
12 出入筋
13 穢多の職分
14 非人取締書付
むすび

第四章 おこし奉公人――大坂と江戸の野非人対策
はじめに
一 大坂のおこし奉公人
二 江戸の無宿対策
三 江戸の非人と大坂の非人

第五章 維新時における東京の非人――旧非人制度の終末
はじめに
一 維新前の非人の渡世
二 維新時の非人頭の嘆願
三 再度の嘆願
むすび

第六章 壬申戸籍始末
はじめに
一 明治4年戸籍法
二 穢多・非人の称を廃止
三 敗戦前の動向
1 全国水平社の創立(1922年)
2 全国融和事業大会の請願(1925年)
3 第6回全国水平社大会の決定(1927年)
4 福岡県親善会の申請(1932年)
四 敗戦後の措置
付 大阪市における対応
むすび

あとがき

 

 

  • 判型 : A5
  • 頁数 : 296頁
  • ISBN : 978-4-907244-13-2

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