映画「評論家」不満

重政隆文著(大阪芸術大学芸術学部教授)

定価:本体価格1,800円+税

2020年12月25日発行

著者は大学教授にして、映画館主義者あるいは映画館原理主義という立場から映画評論を行い、現在も映画館で鑑賞した作品のみを映画会社のプロモーションとは無関係に評論している。もちろん、その鑑賞数は限界があるとはいえ、常人にはまねのできない頻度となっている。それだけにその映画鑑賞数と経験によって、さらには徹底して集めた映画評論本を読破したうえで、映画評論を職業としている人々の評論を一刀両断にしている。ある時は完膚なきまでに映画館主義を掲げる映画評論家の欺瞞を明らかにし、そして本当に映画(映画館鑑賞)を愛する評論家には称賛を惜しみなく与えている。たしかに映画コンテンツが二次的メディアに拡大して、それが映画産業を支えていることは事実である。メディアで提供されようがコンテンツとして配信されようが、個人、あるいは家庭内でのモニター、スクリーンで鑑賞される状況になっており、もちろん、スマートフォンで移動中に鑑賞されることも市場を支える大きな一角であることはまちがいない。しかし、これからも映画館での鑑賞は廃れることはないであろうことは、コロナ禍とはいえ、大ヒットを飛ばした映画と同時にミニシアターで映画が常にかけられ、ファンに支えられているという事実である。真に映画産業を支えるために、今日から映画館主義を掲げることもいいのではないかと、この本は思わせてくれるのである。

2018年11月発刊『映画「評論家」未満』の姉妹書

◇目次紹介◇

まえがき

Ⅰ アカデミズム

(1)蓮實重彦 とりあえず総長以後 

(2)阿部和重 蓮實重彦は二人要らない 

(3)黒沢清 蓮實重彦の掌の上 

(4)菊池成孔 音楽家の権威主義と優しさ 

(5)中条省平  天才と凡人の間、あるいは前衛から後衛へ

(6)四方田犬彦 同じ穴のムジナ 

(7)加藤幹郎 映画学者の鑑 

(8)阿部嘉昭 「性」「的」念仏 

(9)藤井省三 映画は文学の扶養家族か 

(10)北野圭介 アカデミズムの落とし穴 

(11)狩野良規 威張るあらすじ

(12)宮台真司・宮崎哲弥 M2の土俵 

(13)春日太一 映画史研究家としての根拠 

Ⅱ ジャーナリズム

(1)石飛徳樹 新聞の映画批評

(2)沢木耕太郎 侮れない局外批評

(3)山根貞男 時評継続の存在価値

(4)町山智浩 解説と批評は違う 

(5)柳下毅一郎 映画館などなくてもいい? 

(6)宇多丸 ラジオ映画批評の可能性 

(7)川勝正幸 商業主義の呪縛

(8)十河進 生活に溶け込む映画 

(9)前田有一・柴尾英令 ブログ映画批評は誰のため 

(10)木全公彦 やはり野に置け、エロ映画 

(11)麻生香太郎 レポーターに求めるもの 

Ⅲ フェミニズム

(1)まつかわゆま 映画の見方の読み方 

(2)御園生涼子・睡蓮みどり  映画批評に「女性ならでは」はあるか 

(3)真魚八重子 アマからプロへの失速 

(4)高橋いさを・本谷有希子  劇作家映画論の片手間とおよび腰

(5)林瑞絵 フランスから映画批評を考える 

(6)北川れい子 誠実大量、媚びへつらいなし 

 Ⅳ DVDイズム

(1)石岡良治 教養が邪魔をする 

(2)貴田庄・梶村啓二 小津評価の反復とズレ 

(3)瀬川裕司・末延芳晴 DVD批評の行方

(4)宮尾大輔 非観客による観客論の説得力 

(5)ましこ・ひでのり・三浦哲哉 モニター上の空論

あとがき 

  • 判型 : 四六上製
  • 頁数 : 312頁
  • ISBN : 978-4-907244-42-2

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